成瀬記念講堂は創建当時には豊明図書館兼講堂と称し、教会建築風の煉瓦造建物で建物規模は延床面積787m2、梁間方向に3スパンあり、
中央部スパンが8.2m、高さ約8mの空間にハンマービーム小屋組が採用され、その両側にスパン3.87mの2階建部があり、2階座席が3方向から中央部を囲む配置をしている
。規模から見ると大きいとはいえないが、明治38年に帝国大学において鉄骨造、鉄筋コンクリート造の講義がはじめられており、
当時は最先端の煉瓦造技術、木造小屋組架構技術を駆使した大きな空間建築といえよう。
構造形式は竣工時の外壁部は煉瓦造、内部、小屋組が木で、小屋組にハンマービーム架構を採用しており屋根が自重で広がるのを防止するために小屋組にタイバーを使用している。
タイバーはヨーロッパ教会の小屋組にはあまり使われていないが小屋の安定のために挿入したと思われる。
図書館兼講堂は自然採光と換気のための屋根に大きなトップライトがあり、カーテンのロープ操作で室内が暗転出来るようになっている。
桁行方向はハンマービーム式に張出した木組みの連続が特徴になっており、木の納まり、くり形、接合金物、木製手摺、板張り仕上げ、
ゴシック風窓のステンドグラス等が内部の空間の造形を盛り上げている。
関東大震災の時に2階の外壁に採光窓を設ける工事中に被災し、被害写真にその工事の模様と外壁の煉瓦造部の亀裂が写されている。外壁は煉瓦造部を木造軸組に改修している。
小屋組のタイバーの使用が屋根の大きな損傷を防いだと思われ、内部空間は創建時とほぼ同じ状態あるといわれている。明治期の学校建築として文京区指定有形文化財の貴重な史料であり、
今も斬新な空間を維持し、健在で、講堂として現在も若い学生に大きな感動を与え続けている。
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