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2.2 同志社礼拝堂 宣教師D.Cグリーン設計 明治19年竣工

図4 同志社礼拝堂 スパン14.2m

 ゴシック様式の気品の高い同志社礼拝堂は明治19年に竣工し、外壁が煉瓦造の建物で設計者は宣教師グリーンといわれている。 木造小屋組にはシザーストラスとハンマービームを採用している。 白い壁から大きく突き出したハンマービームとシンプルな形のシザーストラスとの組合せは空間に躍動感をあたえている。 この礼拝堂が成瀬記念講堂に影響を及ぼした建物といわれている。 それは、日本女子大学の創設者成瀬仁蔵が敬虔なクリスチャン(プロテスタント)で牧師時代の明治23年12月から27年にアメリカ留学し、 明治29年まで大阪の梅花女学園校長をしていた。成瀬仁蔵と同志社には次のような関係がある。 日本女子大学創設期の学監である麻生正蔵、幹事である塘茂太郎は同志社の卒業生であり、麻生正蔵が同志社で教師をして時に成瀬仁蔵は、日本女子大学創立への協力を再三要請している。 このことから、幾度か成瀬仁蔵が同志社を訪問した可能性が高い。また、礼拝堂設計者グリーンと成瀬との書簡も日本女子大学に保存されている。 成瀬記念講堂の設計者田辺淳吉は明治36年7月に東京帝国大学を卒業し、10月に清水組に入社した。  最初の仕事である大阪瓦斯会社が明治38年に竣工し、また当時、第一銀行京都支店の施工側におり関西に頻繁に滞在していたと思われる。 明治37、38年は成瀬記念講堂の設計時期でもあり、同志社礼拝堂を訪問し設計のイメージを膨らますことは可能であったであろう。
ただ、ハンマービームとシザーストラスの組合せの小屋組に対してハンマービームのみの小屋組で架構形式が異なっている。 成瀬記念講堂は当初図書館兼講堂が主目的であった。 当初の設計案と思われる図面では窓の大きな木造図書館のイメージであったが、 学校側の要請か同志社キャンパスと同じ教会礼拝堂風のイメージと防災的な課題で煉瓦造外壁へと設計変更されたと思われる。 2階図書館部の採光を確保するために、とってつけたように教会建築にはない屋根面に天窓が設けられたと思われる。

2.3 同志社クラーク記念館(神学館) ドイツ人 R.ゼール設計 明治26年竣工

 明治26年に竣工した重要文化財同志社クラーク記念館はゼールの設計の現存する数少ない建物である。 クラーク記念館の2階に礼拝堂を設けている。 日本建築学会大会学術講演梗概集 (九州)昭和56年9月 前 久夫研究室主宰の「同志社クラーク記念館について-設計図と仕様-」の論文によると設計図と仕様(重要文化財指定)が発見され、 設計図に東京2月ゼールのサインがある。 また、「此建築ノ設計ハ東京明治学院ノらんです氏ノ紹介ニヨリ専ハラ独逸人ゼール氏ノ工夫計画ニ因ルモノ」と記されている。 礼拝堂の切妻屋根断面図には天井の形は端部で水平に、中央部に折上天井に内接する半円形状の部材で構成されており木製タイバーが書かれている。 現状は残念ながら2階の礼拝堂は2分割され普通教室に改修されており、天井はフラットにボードが貼られており、原形の小屋組を見ることが出来なかったが、 近藤豊著「明治初期の擬洋風建築の研究」に昭和36年頃の写真1が掲載されており、木造の収まり等は同時期の設計の千葉教会に受け継がれていると思われる。 同志社の彰栄館(明治17年)、礼拝堂(明治19年)、有終館(明治20年)はグリーンの設計といわれている。

写真1 神学館内部
また、ハリス理化学館(明治23年)の設計者は英国人建築師ハンセルである。 同志社は外国人建築師の活動の場で、ゼールの参加はミッションスクールの横の連絡があり建築師を紹介し採用されたと思われる。 日本女子大学創設期の学監麻生正蔵は明治20年に同志社卒業し29年まで教職におり、幹事塘茂太郎は27年の卒業で、 両者にとって当時は礼拝堂とともに神学館も身近な建物ではないかと思われる。

2.4 平安女学院明治館 イギリス人 A.N.ハンセル設計 明治27年竣工

図5 明治館

 同志社から歩いて10分位のところにある平安女学院明治館はオランダ風の妻壁を持つ煉瓦造2階建で、 小屋組にハンマービームを用いた部屋は2階にあり、現在は使用されていない。 折上天井の下にハンマービームとタイバーで構成されているが、 今までの形状と異なるのはビームの下のブレースが円弧状の独立した部材ではなく、 弧状にえぐられた3角形部材となっており、他のハンマービームの小屋組とは一味違ったデザインとなっている。
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